声というものはプロスポーツにとって重要である。
科学的にもかけ声は重要であることが近年証明されており、運動システムの活動の興奮性が高まり、握力が増大するという論文が2022年に発表されるなどしている。
また、球技においても声によって仲間を鼓舞したり、指示を出したりすることが多い。
その中で、スポーツ内で発せられた叫び声や掛け声がビジネスになっているケースもある。
今回はそれを探っていきたい。
叫び声とパフォーマンス
叫び声は、実際にスポーツのパフォーマンスを高めるという効果が実証されている。
宝田雄大と野崎大地が2022年に発表した論文によれば、叫ぶことで握力が有意に上昇した。このことから、「叫ぶ」ことが運動系の興奮性を高め、筋力発揮を促進することを示唆している。(詳細については論文を参照していただきたい)
これはシャウト効果とも呼ばれており、陸上の投擲競技などのパワーを使う競技でで叫ぶことが多いが、このシャウト効果を狙ったものである。
無論、仲間との連携を行うためにも声は使われている。サッカーの槙野智章はディフェンダーとして「声を出さないと自分に不利な状況が生まれる」として、他の選手に対して声をつかって指示や鼓舞をしており、チームにさらなる活気をもたらしたこともあった。
声とブランディング
声によって有名になっていった選手も多い。
こういった声が注目を浴びた選手は卓球の張本智和が好例だろう。張本は得点時に「チョレイ(ショレイとも)」と叫ぶことが多い。結果として、この声が張本の代名詞となっていき、人気と実力を兼ね備えた選手へとなった。それ以外にも卓球は静かな環境で行われることが多く、声が良く聞こえやすい。そのため、古くから声が注目されているケースが多い。
格闘技界でも声が注目されたケースは多い。
かつてK-1で活躍したフランソワ・ボタはパンチの際に特徴的な声を出すことが多く、今でも古参ファンの語り草となっている。最近でも、総合格闘家のクレベル・コイケが関節技を極める際に「ポペガー(日本語で「極める」の意)と叫んでおり、本人の代名詞となっている。
声とグッズ
叫び声がグッズになった例は意外と多い。
先述の張本智和が所属していた琉球アスティーダでは、「チョレイ」が大々的にデザインされたTシャツやタオルが販売された。
引退後も声で著名だった選手といえば、アントニオ猪木だろう。
キャリア晩年期の1990年から試合後に「1、2、3、ダー!」という掛け声のパフォーマンスを行っており、猪木の試合を見たことがなくとも猪木の名とこのかけ声を知っている人は多い。
その「ダー」も本来は試合後に時折見せていたものであり、それが派生した結果、猪木の代名詞となり、死去から2年以上経過した今もその言葉が書かれたグッズが販売されている。
最後に
声というものはスポーツにとって不可欠である。これ以外にも声はスポーツにとって重要である。
今回は選手にも着目したが、プロスポーツの会場ではスタジアムアナウンサーや売り子、そしてファンなどスポーツには声が必須だ。
新型コロナウィルスの中、声が制限されたが、その時はさみしかった印象がある。声であふれるスタジアムやアリーナに足を運び、五感で楽しめるエンターテインメントを楽しみたい。
参考文献
Yudai Takarada & Daichi Nozaki, “Shouting strengthens voluntary force during sustained maximal effort through enhancement of motor system state via motor commands”,2022 ,https://www.nature.com/articles/s41598-022-20643-4
日本トップリーグ連携機構「スポーツオノマトペ なぜ一流選手は「声」を出すのか」https://japantopleague.jp/archives/2062
REAL SPORTS「浦和・槙野智章が示した“声”の重要性 ミシャの教えを胸に試合中に「声を出す」2つの意味」https://real-sports.jp/page/articles/433034461374841697
デイリー新潮「「1、2、3、ダァーッ!」が生まれた瞬間に“起きたこと” 猪木さんに魅せられた伝説のカメラマンが明かす」https://www.dailyshincho.jp/article/2022/10080914/?all=1#goog_rewarded
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