PR

そもそもスポーツチームはどうやって稼ぐのか?

プロスポーツチームは、プロスポーツの興行を生業としている。しかしながら、その稼ぎ方は案外分からない。ここでは、スポーツチームの稼ぎ方について考えてみたい。

スポンサーリンク

スポンサー収入

チームを支援してくれる法人や企業から支払われる収入である。

スポーツのユニフォームには、画像のように企業の名前やロゴがプリント・刺繍されていることが多い。また、コートやフィールドを囲むように、企業や法人のロゴや名前が書かれた看板などが設置されている。

これらは広告料の”対価”として選手のユニフォームを貸看板のように扱っているといえよう。

なお、このようにユニフォームやスタジアム内に広告を出せるチームは基本的に大口スポンサーがほとんどである。実際、欧州の大規模なチームではユニフォーム胸部への企業ロゴ掲載料が1年あたり1000億円にも及ぶとされている。
また日本でもトップチームである川崎フロンターレの上半身広告は胸以外も含めすべてのスペースで1億円以上となっている。

特にスタジアムでは様々な箇所がスポンサーに販売されており、フィールド上やフェンス部への掲載だけではなく、場内の縁やコンコースや通路、ボールボーイや担架、座席の命名権など、広告は多岐にわたる。

ユニフォームやスタジアムへの広告掲載以外にも、練習着への広告掲載や練習場への広告、また、チームロゴや選手画像の使用権、選手・マスコットなどの派遣や来賓席使用権など、様々な物がスポンサー料の対価として設定されている。それに加えて、一部のチームでは、小口スポンサーを募集しており、数十万で名前・ロゴの掲出などを可能とする権利を実施している。

Jリーグなどをはじめ、多くのリーグではこのスポンサー料が収益の中心となっており、2020年代初頭のコロナウィルス感染拡大期における観客動員の制限中はスポンサー料がかなり重要になった。

なお、選手が個人でスポンサーを獲得する事例もあり、MLBロサンゼルス・ドジャース所属の大谷翔平は球団からの年俸とは別に1億ドルのスポンサー収入を得ていると報道されている。

放映権料

スポーツチームおよびスポーツリーグは、テレビ・ラジオやインターネット配信などへ試合の放映権を販売している。その対価としてもらうのが放映権料だ。

放映権といっても試合全編を独占的に放映できる権利試合後に様々な番組で使用できる権利など、多岐にわたる。ただ、リーグによっては報道・スポーツ番組での放映は放映権料を要求しないことが多い。
メディアからすると、自局内でコンテンツを制作せずとも再現性がないコンテンツを独占的に放映できるため、試合の放映権を購入することが多く、近年ではインターネット配信サービス(Over The TOP)が新たなコンテンツとして各種スポーツの放映権を獲得している。

放映権の扱いには2パターンある。リーグがまとめて契約するものとチームごとに契約するタイプの二つがある。
リーグがまとめて放映権を管理することで、放映権料の分配によって戦力均衡を図ることができる。一方、チームごとに契約することでは、チームそれぞれが人気獲得の努力を行う動機付けにもなる。

日本プロ野球は原則として後者であるが、世界的にはリーグが包括して放映権を管理することが多い。アメリカではハイブリッドで行うこともある。(例:MLBでは全国・国際中継はリーグが、ローカル中継はチームが放映権契約を行う)

海外、特にアメリカでは収益の中心となるほど重要なものとなっており、国際大会では高額な金が動くことが常となっている。
実際問題、大リーグの放映権収入は約6000億円に対し日本プロ野球のそれは500億円ほどで10倍以上もの差があり、球団数の違いこそあれど日米の野球における年俸差や経済規模の主たる原因となっていると有識者は指摘している。
また、オリンピックやFIFAワールドカップなどの放映権料上昇は目を見張るものがあり、2022年のFIFAW杯では放映権料の高騰を各放送局が嫌ったために開催半年ほど前まで日本での地上波放送が確定しなかった。

チケット収入

チケット収入も重要である。自チームの主催試合で入場者が会場に入場するために支払う金額である。特に、試合数が多い野球、観客席が膨大なモータースポーツ以外にも、放映権が期待できないマイナースポーツでは重要性が高い。

チケットは1試合のみ購入できるチケットだけではなく、シーズンシート(年間席)や通し券などの複数日にまたがって観戦できるチケットもある。実際、多くのチームはホーム戦全試合を比較的安価で観戦できるシーズンシートをシーズン前や最序盤に売り出している。

入場料収入は「入場者数×チケット価格」で決まるが、低額すぎると頭打ちとなり、高額すぎると観客がチケットを購入しないため、最も入場料総額が高くなる均衡点を突かなければならない。

近年ではフレックスプライスやダイナミックプライジングなど、時期や対戦相手、売れ行きなどを鑑みてチケットの価格を変動させて最適な価格にすることが多い。
加えて、VIP席やホスピタリティシートなど、高額な席種を増やすなどして一人当たりのチケット単価を高めており、NBAの人気チームでは最前列席を3000ドルで販売したり、NHLはVIP席の年間販売など様々な利益拡大策を講じている。

また、チケットを購入して来場する観客は会場内の売店で飲食物やグッズを購入することが多く、その売上も重要な収入となっている。

マーチャンダイジング(物販)

マーチャンダイジングと聞くとよく分からないが、簡単に言えばグッズの売り上げと言え、いかに安く生産したうえで、どれだけ付加価値を付けて多くの量を販売できるかが重要と言える。

レプリカユニフォームやTシャツなどのアパレルをはじめ、タオル、キーホルダーなどの小物類など様々なグッズが売られている。時には優勝記念グッズや他業種とのコラボグッズなど、特別なグッズが売られることが多く、試合終了直後に記録達成記念グッズが販売されるケースもある。

チームによっては様々なグッズが売られており、プロ野球の阪神タイガースでは。カー用品やペット用品、果ては飲食物まで多くのグッズが販売されている。また、近年では「推し活」文化の発達などにより選手個人のグッズが多数売られている。

人気チームの場合ではグッズを販売する店舗を構えて直販することも多い。また、近年ではECサイトを開設し、グッズの通信販売を行うことがどのようなチームであれ、基本となっている。

その他の収益

スポーツ界にはそれ以外にも収益を挙げる方法がある。以下、簡単に説明したい。

ファンクラブ会費
ファンクラブを開設し、クーポンや特別グッズ・チケット早期購入権利などを販売し、会費で収益を得る。

ユースチーム・スクール収入
子ども向けのスクールやアカデミーなどを運営し、受講料やスポンサー料などから収益を得る。チームによってはチアリーディングなどその競技以外のスクールを併設しているケースもある。
サッカーなどではユースチームから選手を獲得することで補強にもつながる。

移籍金収入
サッカーにおいて、所属する選手が他のチームに移籍する際に発生。
連帯貢献金として、少年・若手時代に所属していたチームに移籍金が分配されるケースもある。

賞金・配分金
リーグ戦やカップ戦での成績に応じ、リーグ・主催者から賞金が支払われる。
また、賞金とは別に配分金が支払われることもある。強豪チームや人気チームに多く分配するなどして差をつける「傾斜配分」が行われることが多い。

寄付金・クラウドファンディング
ファンからの寄付。広島カープの「樽募金」が有名な実例。近年ではクラウドファンディングを通じた寄付がマイナースポーツを中心に収益確保の一つとなっている。

デジタルコンテンツ・SNSからの収益
インターネット上にコンテンツを投稿・販売することで、収益を得る。
バーチャルグッズ・NFT(非代替性トークン)の販売や動画配信による収入など、デジタルコンテンツ関連の収益獲得の方法は多岐にわたる。

まとめ

現代のスポーツチームの収益構造は、従来の入場料収入だけでなく、多岐にわたる収益源を組み合わせた複合的なビジネスモデルとなっている。

特にスポンサー、放映権、チケット、物販はどのスポーツでも収益の柱となっているほか、その他の収益により、収益機会の拡大が図られており、とくにデジタル技術を活用したものは急速に発達している。

スポーツチームの収益構造は、単にチケットだけ売るという時代から、複数の収益源を戦略的に組み合わせる時代へと進化しており、多角化によるリスク分散と収益最大化が現代スポーツビジネスの基本戦略となっている。

この多様な収益構造こそが、現代スポーツチームの持続可能な経営を支える基盤となっている。

参考資料(順不同)

スポジョバ「プロスポーツのビジネスモデルを紹介!売上を決める4つの収入!」https://spojoba.com/articles/5

テレ東プラス「脱チケット収入依存 Jリーグクラブの独自戦略」https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2021/023963.html

Jリーグ「2024年度 J1 クラブ決算一覧」https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/club_info/j_kessan-2024.pdf

時事ドットコム「米大リーグ・ドジャースの大谷、年収150億円 20のブランドと契約―米メディア」https://www.jiji.com/jc/article?k=2025032000384&g=spo

Forbes JAPAN「世界で最も高額な「サッカークラブの胸のスポンサー」TOP10」https://forbesjapan.com/articles/detail/44151

川崎フロンターレ「スポンサーシップ2024」https://www.frontale.co.jp/partners/partnership/index.html

松本山雅FC「オフィシャルパートナー募集」https://www.yamaga-fc.com/partner/wanted

東京ヴェルディ「東京ヴェルディ『グリーンパートナー2024 』募集のお知らせ」https://www.verdy.co.jp/news/12675

REAL SPORTS「日本スポーツ界で遅れる“放映権ビジネス”の最新事情。米国との決定的な差とは?」https://real-sports.jp/page/articles/537464017841554369

NHKラジオ らじる★らじる「大リーグとプロ野球 広がる経済格差」https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/my-asa/myk20250115.html

47NEWS「繁栄支える巨額の放映権料、スタジアム転用や新ビジネスで収益源を多角化【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生⑨】」https://www.47news.jp/11351400.html

日刊スポーツ「【W杯】悲鳴上げるテレビ局「出せる金額ではない」無料放送の限界域へ高騰続ける放送権との攻防」https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202212040000683.html

朝日新聞「NHK・テレ朝・フジがカタールW杯放送権 高騰で各局個別獲得に – サッカーワールドカップ(W杯)」https://www.asahi.com/articles/ASQ385TKQQ38UCVL00R.html

日本経済新聞「MLB:放映権料高騰続く海外スポーツ 大リーグ中継はどうなる」https://www.nikkei.com/article/DGXZQODH180US0Y5A210C2000000

ゼロからのスポーツビジネス入門「プロスポーツがメディアに愛される理由 スポーツの巨額マネーの裏側」https://zerosportsbiz.com/broadcasting-rights

PRESIDENT Online「「スポーツ離れ」はウソだった…テレビが捨てた「ボクシング中継」にネトフリ、アマゾンが巨額資金を投じるワケ 「井上尚弥出場試合」は最大のピーク視聴数を記録 」https://president.jp/articles/-/96960?page=1

スポーツナビ「三浦颯太と一緒に知る。「シーズンチケットってなんですか?」」https://sports.yahoo.co.jp/official/detail/2024101700027-spnaviow

note「スポーツチームの事業の根幹をなすチケット事業における取組」(SPOLABo | スポーツマーケティングラボラトリー)https://note.com/spolabo_/n/n74cfaa05f0cc#614401fe-4d3c-4696-acd0-79f4f3d11285

産経ニュース「価格は球界異例の300万円 プロ野球西武が販売する「超高額チケット」の中身」https://www.sankei.com/article/20240318-F27QYU73ZJAEPECK3CJFLD5LBA

朝日新聞「プロスポーツ変える「価格ビジネス」 チケット代の秘密」https://www.asahi.com/articles/ASP8V4HL2P8GULFA005.html

HALF TIME「ファナティクスが描く「スポーツ・マーチャンダイジングの未来」と、カギになる日本戦略」https://halftime-media.com/interviews/fanatics-3

メディア環境研究所「スポーツ観戦最前線 10~20代はスポーツ観戦でも「推し」を見つけて投資する?」https://mekanken.com/contents/7220

スポニチ Sponichi Annex「知られざる“球団グッズの世界”「一番儲かる商品は?」「背番号ユニの選手本人の取り分は?」」https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2025/03/10/kiji/20250310s00001173278000c.html

サッカーキング「Jクラブ経営を支える“3本柱” サポーターも知っておくべき収益構造の基礎知識」https://www.soccer-king.jp/news/business/20170911/639321.html

HALF TIME「球団・クラブのグッズ売上を倍増。ファナティクスの「ファンの熱狂を捉える」マーチャンダイジング戦略とは?」https://halftime-media.com/interviews/fanatics-merchandising

朝日新聞「カープ救った「たる募金」、マリリンも来た 昭和感漂う「県営」球場」https://www.asahi.com/articles/ASS1C3J58RDVOXIE02V.html

デイリースポーツ online「Jリーグ「ファン指標配分金」を実施 来場、視聴実績に応じて5億円を分配」https://www.daily.co.jp/soccer/2020/02/07/0013097232.shtml

Sportico「How Sports Teams, Leagues and Owners Make Money」https://www.sportico.com/feature/how-sports-teams-leagues-make-money-1234766931

コメント

タイトルとURLをコピーしました