PR

プロ野球興行に男性アイドルを呼ぶべきか

結論から述べると、はっきり言って「不要」という結論に私の中では達した。プロ野球は他業界の人を呼ばずとも人気の”エンターテインメント”だからだ。

スポンサーリンク

理由

そもそもプロ野球興行は日本のスポーツの中でも最高クラスの人気である。普通にやっていれば、2〜3万人、どれだけ条件が悪くとも平日に1万人は集まるという恐ろしいコンテンツである。
よく、超がつくほどの有名アーティストはドーム・スタジアムツアーを行っているが、プロ野球はホームだけでも70日以上、プロ野球全体では合計900日近くもドームやスタジアムでの興行を行っている。

とはいえ、ただ単に野球をやるだけではスタジアムとテレビ・インターネットからの視聴で事足りてしまう。それを考えると、何かしらの施策を打ちながらでないと簡単に観客動員数は減ってしまうこともありうる。
そのため、試合前後にイベントを行ったり、始球式などに著名人ゲストを呼ぶことも多く、そこでしか見られないものを増やしている。

ただし、これはあくまでも「観客動員を増やす」という目的のもと行っているものである。こんなことは言うべきではないが、あくまでもメインは野球の試合であり、始球式やイベントなどは「観客を集める手段」の域を出ない。

しかしながら、男性アイドルを呼んでしまうと、その手段と目的が入れ替わってしまっている。「男性アイドル」を見るという目的で「チケットを購入する」という形になってしまう。

本来、プロ野球は「野球の試合」をみるために「チケットを購入する」という人以外はいないはずであるが、こういった人が現れてしまう。
さらには、アイドルファンとプロ野球ファンの文化的衝突も懸念される。応援スタイルや観戦マナーの違いから起こるトラブルは、どちらのファン層にとっても不快な体験となり得る。アイドルファンは野球に詳しくない可能性が高く、球場でのルールやマナーに不慣れであるだろう。

実例

こうした懸念は単なる想像ではなく、実際に起きている問題だ。

記憶に新しいところでは、2025年4月に横浜DeNAベイスターズが元ジャニーズの男性タレントを招いた際にはそのタレントのファンにより、試合後に開催されるトークショーのために観客が殺到し、入場口付近では観客が集まりすぎて群衆事故寸前となっている映像をはじめ、他者を突き飛ばす行為やゲートの破壊行為といった、もはやフーリガンによるトラブルがSNS上に投稿された。あくまでも憶測だが、おそらくチケットを持っていない人もいたと推測する。

それ以外にも野球を観に来たファンとアイドルを目当てに来た観客との間で多くの摩擦が生じ、SNS上でも激しい論争となった。球団側が意図したのは集客効果だったはずだが、結果として球場の雰囲気を損ね、多くの既存ファンの不満や異業種のファン同士による対立を招く結果となった。

さらに深刻な例として、プロ野球で男性アイドルが始球式を行った際にはファンが試合を見ずに帰った以外にも、特別席にいるとわかったファンが試合に背を向け特別席にカメラを向けたり、特別席近くに人だかりができるなど、危険な事故などにつながりかねないトラブルが起きた。(出典

また、プロ野球ではないが、甲子園の開会式でジャニーズJr.を招いた際には、開会式終了後に2万人もの観客が試合を見ずに帰ってしまうという事態も起きている。(出典

これは野球の価値を完全に矮小化し、「アイドルを見るための手段」として野球の試合が利用された形だ。選手たちの真剣な試合が「おまけ」扱いされるような状況は、スポーツの大会の本質を損なうものと言わざるを得ない。

問題点

これらの事例は、「男性アイドル招聘」という一見魅力的に見える施策が、実際には球団、既存ファン、そして野球そのものにとって有害となり得ることを示しており、様々な問題をはらんでいる。

まず第一に、ターゲット層のミスマッチという問題だ。
男性アイドルのファン層と従来の野球ファン層には大きな乖離がある。基本的にアイドルはF1層(20歳から34歳の女性)がボリュームゾーンである一方で、プロ野球はM2層(35~49歳の男性)がボリュームゾーンである。
実際問題、さらなる人気獲得にはボリュームゾーン外のファンを獲得するべきではある。だが、野球というスポーツ自体に興味がない層を一時的に取り込んだとしても、それが継続的な観客増加や球団のファン拡大につながる可能性は高くない。そのうえ、アイドルファンはそのアイドルのみを追いかけているようなファンも多く、野球を見るほどのリソースがないなどの理由から、一度きりの「ついで観戦」になってしまう可能性が高く、長期的な視点では意味をなさない。

第二に、コアなファンの離反リスクである。
野球そのものを楽しみに来ているファンにとって、アイドルのパフォーマンスやそれに伴う特殊な雰囲気は、純粋な野球観戦体験を阻害する要因になりかねない。実際に男性アイドルが始球式などで呼ばれた際には、トラブルも多数報告されていて、SNS上でもプロ野球ファンと男性アイドルファンの小競り合いが事あるごとに起きている印象だ。
また、特に熱心なファンほど、「野球の試合」以外の要素が増えることに不満を感じるだろう。ただただ野球が見たい人が疎外感を感じてしまうとヘビー層のファンが減ってしまうこともあり得る。ひいてはシーズンシートなどの固定収入減少も起こりかねない。

第三に、費用対効果の問題がある。
人気男性アイドルを招聘するための費用は決して安くない。さらには警備費用もかかってしまうケースも大きい。そのうえ、その費用がファン獲得にも必ずしもつながらないといえる。
その費用対効果を考えた場合、同じ予算を野球の魅力を高める施策、例えば観戦環境の改善やファンサービスの充実に投じた方が、長期的な観客動員につながる可能性が高い。
一時的な話題づくりや新規観客の獲得よりも、長期的な視点での健全なファンコミュニティの育成こそ、プロ野球が取り組むべき課題ではないだろうか。

まとめ

以上のように、プロ野球興行に男性アイドルを呼ぶことには多くの問題点が存在する。短期的な話題づくりや一時的な集客効果よりも、野球本来の魅力を高め、ファンの試合体験を向上させる取り組みこそが重要だ。
例えば、野球と親和性の高いコンテンツや人物とのコラボレーションや、ファミリー層向けのイベント、デジタルコンテンツの充実などは、野球の価値を損なうことなく新たなファン層を開拓する可能性を秘めている。

プロ野球は日本でも有数の集客力と魅力を持つコンテンツである。その本質を見失わず、野球というスポーツの価値を高める方向性でのファン拡大策を模索すべきではないだろうか。男性アイドルを呼ぶことは、短期的には話題になるかもしれないが、長期的には野球界全体の価値を下げてしまうリスクが大きすぎる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました