平成を彩ったアイドルグループ「嵐」が実に4年以上ぶりに動き出した。リーダーの大野智に至っては実に2020年の大晦日以来のメディア登場であった。
しかし、それは嵐の最終ツアー、ツアー終了後の解散(当人らは活動終了と表現)の発表でもあった。
嵐はかつて1年2ヶ月でドーム50公演という前代未聞の金字塔を打ち立てている。そんな嵐のラストツアーは並の集客では無い。恐らくドーム・スタジアムフル稼働で行うはずだ。それを考えると、スポーツ界に影響を与えることは間違いない。
では、嵐のラストツアー中にスポーツ界にはどのような影響があるのか?少し想像してみたい。
実施する可能性がある会場
まずは実施する可能性がある会場だ。まず、前提条件として、十分な広さをもつ数万人収容の会場でなければならない。そして、ライブのノウハウがなければならない。この条件を満たす会場を勘案すると、以下の通りである。
会場名 | ライブ時収容人数 | 所在地 |
国立競技場 | 7万人程度 | 東京都 |
日産スタジアム | 7〜8万人 | 神奈川県 |
東京ドーム | 55,000人 | 東京都 |
京セラドーム大阪 | 55,000人 | 大阪府 |
バンテリンドーム ナゴヤ | 48,819人 | 愛知県 |
みずほPaypayドーム福岡 | 52,500人 | 福岡県 |
大和ハウスプレミストドーム | 53,820人 | 北海道 |
エコパスタジアム | 5〜6万人 | 静岡県 |
味の素スタジアム | 5万人程度 | 東京都 |
ヤンマースタジアム長居 | 5万人程度 | 大阪府 |
キューアンドエースタジアムみやぎ | 5万人程度 | 宮城県 |
クラサスドーム大分 | 4〜5万人 | 大分県 |
ベルーナドーム | 3~4万人 | 埼玉県 |
可能性が高い会場は以上の通りだろう。実際にはこれ以外にも開催する可能性がある会場はあるが、この14会場が真っ先に候補に挙がるに違いない。
このうち、5会場がプロ野球、3会場がJリーグ本拠地、嵐がコンサートを実施したのは赤字で示した7会場である。
実施日程予想
実施日程について考えていきたい。今回は3月開幕、5月国立競技場で最終公演というプロットを想定した。
現在のところ、3月5~10日にWBCの東京開催が決定しているため、東京ドームからスタートするとすれば、3月13日に初日を迎えることが予想される。
また、プロ野球選手会はWBC開催に伴い、開幕の2週間後倒しを要望しており、実現すれば4月10日の開幕となる算段が高く、それまでの間であればドームでのライブの障壁は下がる。
ただし、既にドームでのライブを発表しているアーティストも存在する。例えば、Vaundyは3月に大阪と札幌でライブを行うとしている。
それを踏まえたうえで日程はそうなれば、13日から4週連続計12〜13回ものライブを東京、名古屋、大阪、福岡の順で実施。その後、札幌、大阪or名古屋と2回ドームを挟み、5月1〜2週に国立競技場で嵐の大千穐楽となるライブを迎えると予想。海外公演もありうるが、国内ではこうなると予想した。
直接的な影響
まずは直接的な影響だ。
スポーツ界、特に野球界にとって一番の影響はドームが1週間前後使えなくなることだ。
嵐のライブは同一会場で金曜日を起点に3日間連続で行われることが多かった。そのことを踏襲すると、今回も同一会場で金曜日を起点に3日連続で行う形となることが予測される。
さらにはリハーサルやステージの設営・撤収もあるため、4~5日間は使えないはずだ。それを考えると、木曜~月曜は使えない。プロ野球は火曜日~日曜日に6連戦が行われることが多いが、ライブを行うとなれば、その週は火・水の2日しか使えないことになる。
さすなれば、ライブがある週にドームは使えなくなるため、ビジター戦か別会場での開催が余儀なくされる。逆にとらえれば、ツアー期間中は地方開催の可能性が増えるという裏返しでもあるが、地方開催は移動などのコストが嵩み、選手も遠征に疲労が溜まるために避けられることも多く、結果的には本拠地開催が一番良いはずだ。
その一方で、スタジアムにとっては試合がない日に使用料が取れるためによい効果が期待でき、周辺の商業施設も様々な恩恵を受けることができる。
観客動員にも影響が出る。もし、嵐のライブがライブビューイングやペイパービューにより放映・配信される場合、スポーツ観戦よりもそちらを優先する人も多いはずだ。そうなれば数十万人が嵐のライブを見るために他の行事以上に優先する人も多いはずだ。さすなれば、スポーツ興行にも観客動員への影響が出る可能性は否めない。
これは神宮球場や秩父宮ラグビー場に限ってのことだが、試合中に嵐のライブの演出により中断する可能性もありうる。
これは国立競技場とその二つのスタジアムが徒歩数分の距離にあるがためのことではあるが、2020年のアラフェスの収録時に花火や風船が飛んできたことでプロ野球・ヤクルト戦が中断したという過去もある。調整が行われるのは確実だが、重要な場面に水を差されるなんてこともあり得る。
間接的な影響
間接的な影響も大きい。
まずは宿泊施設の混雑だ。
嵐のコンサートは多くの人が様々な場所から。会場に詰めかける。その関係上、スタジアム周辺の宿泊施設がスポーツ開催時以上に混雑する。その上、要項発表時には先に宿泊先を抑えるファンも多いため、収容人数以上の予約が入る可能性もある。すると宿泊代が急騰する。基本的にホテルの料金はダイナミックプライジング制度を導入しており、予約が集中するとより高くなる。
すると、アウェー戦を観戦しようとするスポーツファンにも影響が出て、費用が予算と合わなくなり、アウェー戦観戦を見送った結果、結果的に観客動員が減るという可能性もある。
また、交通の混雑もあり新幹線や飛行機もファンが早く抑えるため、長距離移動手段が軒並み消えることもあり、緩行線も大混雑して、運行に支障が生じる可能性がありうる。
また、メディア戦略にも影響が出る。
ツアー期間中は嵐のメンバーがテレビを中心に様々な媒体に出演することは確実だろう。さらに、ニュースでも嵐のライブの模様が取り上げられるはずだ。そうなると他の芸能やスポーツニュースは押し出される格好となる。一番に被害を被るのはバスケット、バレーボールなど、シーズンが大詰めかつ女性ファンが多いスポーツがテレビなどのメディアに注目されなくなってしまう。
嵐のライブこそスタジアムで行われるが、アリーナスポーツにも影響が出る。
もしも、嵐の最終公演とプロ野球の完全試合がバッティングしてしまったら?考えるだけでも新聞社の社員は胃が痛むはずだが、嵐を優先した結果、スポーツの大記録が霞んでしまう可能性がある。
最後に
嵐の活動終了。今回はスポーツの立場でどのような影響があるかを考えてみたが、はっきり言って嵐という平成後期を彩ったアイドルの終焉の前にはどんなコンテンツもかなわないだろう。
実際問題、嵐のライブの経済効果は絶大だ。以前、宮城で行った4日間のライブでは県の試算で経済効果が93億円になったと試算されたが、今回も開催地毎にそれに匹敵する経済効果がもたらされる可能性がある。
嵐という”文化”の終焉はどのような形となるのだろうか?
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